世界の歴史〈15〉フランス革命 (河出文庫)

二人の著者はどちらも京大教授。本書は、フランス革命の顛末を辿るものだが、このシリーズの中ではやや読みにくさを感じた（特に前半）。曰く・・・フランス革命のころ穀物価格が上昇する。財務総監のチュルゴは流通の規制緩和をしたのだが、これが商人の投機や買い占め、売り惜しみを誘発した。財政改革をしようとすれば貴族の利権とぶつかる。王権は高等法院（貴族院）の弱体化を図るが、貴族は三部会の招集を要請して対抗する。これが皮肉にもブルジョアジーの国政参加への道をひらく。手工業者や農民のあいだでは、この世には善と悪の神がいるというマニ教（初期キリスト教の分派）が広く信じられていた。正義は貧乏人の側にあるとし、金持ちが術策を弄しても、最後は正義が勝つという思想。社会不安とこの思想が激しい行動を引き起こした遠因。徐々に騒然となってくるが、ラ・ファイエットのとりなしで一度は議会と王は和解する。一部の貴族は逃げ出しはじめる。やがて議会は革命政権を成立させるのだが、王や貴族も簡単には屈しない。二重政権状態。さまざまな政治結社が作られる。このうち、ジャコバン・クラブ（正式名は「憲法友の会」）が最大の政治結社。議会は秩序維持を優先し、民衆から遊離していく。そんなときルイ１６世は逃亡を図るがつかまる。イギリスの上層階級はフランス革命に好意的。フランスが弱体化するのなら願ったりかなったり。しかし革命議会と王の対立が先鋭化してくると、反革命に転化していく。一方、内乱含みのフランスは、「普遍的自由のための十字軍」とあおり対外戦争を開始する。ルイ１６世は、外国勢力が革命勢力をつぶすことを密かに願う。議会はついに王権停止。議会の主導権を握ったジロンド派は、ブルジョア重視で議会主義と私有財産保護を優先。一方、フランスの戦争は完全に侵略戦争になっていく。ロベスピエールのモンターニュ派（急進派）は国王裁判の問題を提起し、穏健派のジロンド派はたじろいで分裂。結局、ルイ１６世は処刑されてしまう。一方、フランスに戦争をふっかけられた諸国の同盟軍も足並みがそろわない。フランス国境で足踏みし、革命の自壊を待つ。ロベスピエール独裁となるが、ブルジョワジーは経済統制を嫌い、民衆はあいかわらずの物資不足に不満。ロベスピエールは共和主義者だったが民衆の革命エネルギーに依拠していた。これがテロリズムの解放となり、その制度化が革命裁判所による政敵排除につながり、皮肉にも、ロベスピエール自身が最後は刑死している。ロベスピエールの死後、テルミドール派による左翼弾圧がはじまると、今度は右翼（王党派）が勢いづく。ルイ１６世の子（ルイ１７世）は牢獄で病死したが、ルイ１６世の弟はルイ１８世を名乗る。テルミドール派は、王党派を武力排除する。このときにナポレオンが頭角をあらわす。流血の場となった広場は「融和（コンコルド）」広場と改称し、いいかげんにいがみあいを終わらせようとするがまだまだそうもいかず。政府は、オーストリアと同盟するイタリア諸王をたたくためにナポレオンを派遣する。ナポレオンは快勝するが独断専行。勝手に講和条約を結んでいる。凱旋したナポレオンは、その後、エジプト攻撃計画を提案し、承認される。エジプト攻撃の理由は不明。イギリス−インド航路を断ち切ろうとしたのか、ナポレオンが中央の政争から離れようとしたのか。エジプトを支配してたトルコ軍と戦うが、イギリスのネルソン提督がフランス船隊を撃破し、ナポレオンはエジプトに孤立してしまう。ナポレオンは密かにエジプトを脱出して帰還する。ナポレオン・ボナパルトは、タレイラン等に擁立され、クーデターを敢行し、シエースらと３人で政権を握る。ナポレオンは、革命の子、とされた。なので兵士も熱狂的にしたがった。ジョセフィーヌはナポレオンの６歳年上。しかも二人の子持ち（ちなみに元夫は反革命容疑でギロチンになっていた）。ナポレオンの遠征中にかなり浮気している。子どもができなかったので後にナポレオンに離婚される。コルシカ人のアイデンティティをもっていたナポレオンがフランス人となっていくのは愛するジョセフィーヌの影響もあったのかも？ゴタゴタつづきなので、農民やブルジョワジーには、階級利益さえ守ってくれるなら独裁でもいいじゃないか、という雰囲気が芽生えてくる。これがナポレオン皇帝の伏線になる。ナポレオンは第１統領として権力を集めていく。ナポレオン：社会には財産の不平等が必要であり、財産の不平等に耐えるためには道徳規範が必要であり、道徳規範には宗教が必要である。キリスト降誕は認めないが、社会秩序維持機能は認める。そして、宗教は政府が把握せねばならない。枢密院は世襲制を提案し、ナポレオンがこれを許可するというプロセスを経て、法王ピオ７世をパリに呼びつけ、ナポレオン戴冠。ナポレオンの目は東をむく。ロシア・オーストリア連合軍をアウステルリッツで破り、イギリスは対仏融和に傾いていく。プロイセンが神聖ローマ帝国から離脱して、ロシアとともにナポレオンと戦うがプロイセンも撃破する。ナポレオンはオーストリア・ハプスブルク家のマリ・ルイーズと結婚し、ジョセフィーヌとは離婚。待望の後継者も生まれる。しかし、ナポレオンが言論弾圧もするようになると、国民の支持はナポレオンから離れていく。ナポレオンは海外植民地の確保に無頓着だったため、大陸封鎖してもフランスのほうが苦しくなる。しかも、フランス最優先政策のため、大陸の他国（征服地）での不満も高まる。そのうち同盟軍は、ナポレオンの虚を衝いてパリに侵攻しパリは降伏する。タレイラン政府が組織されナポレオンの退位を決議。タレイランはイギリスと協議してブルボン王朝が復活する。ナポレオンは毒薬自殺を図るが、毒薬が古かったせいか死なず。ルイ１８世はパリに帰還。しかし、外国勢力のおかげで擁立された国王は不人気。次第に民衆はナポレオンが懐かしくなってくる。ナポレオンは流されていたエルバ島から脱出し、ルイ１８世は逃亡。一個人による一国の侵略、としてナポレオンは返り咲く。しかし、ナポレオンは、ワーテルローの戦いでイギリスのウェリントンに大敗。またも退位し、ルイ１８世帰還。ナポレオンはセントヘレナ島へ流され、ここで死ぬ。ナポレオンの遺児はオーストリアの貴族になるが１１年後に２１歳で死去。みたいな話。